Premonition
“Sophia ~ Premonition” (予感) is an image story included on the CD-ROM of Langrisser III for the Sega Saturn.
闇に身体を縛られ、身動きの出来ない息苦しさに、私は目を覚ました。
「‥‥夢‥‥」
私は胸に手をあてて、ゆっくりとため息をつく。
まだ心臓が乱れた鼓動を続けていた。
全身が汗に濡れていた。
「‥‥なんて、不吉な夢でしょう‥‥」
夢に疲れた身体でベッドを抜け出し、鎧戸を薄く開けてみる。
外は薄暗く、まだ夜明けまでは少し時間があった。
でも、眠り直す気にはなれず、私はそのまま外へ出た。
神殿の側まで来ると、ルシリス様を奉ったゲートから立ち昇る柔らかな、それでいて神々しい光りが辺りを照らしている。
私は光りに手をあわせ、それから裏手の川へと足早に向かった。
神殿の裏手には小さな滝と、そこから流れ出る川がある。
私は衣服を脱ぎ、ルシリス様への祈りの言葉を唱えながら水にはいる。
冷たい川の水は私の気を引きしめ、身体の中まで浄化してくれるみたい。
そして、あの悪い夢さえも‥‥。
こうして禊ぎをするのが、私たち、巫女の毎朝の日課になっている。
しかし、どうしてでしょうか?
あの夢だけは私の心の中に、拭えぬ大きなシミとなって横たわっている。
「ああ、ルシリス様‥‥。どうか、この世界を救い給え‥‥」
祈るだけで望みが叶うなんて、いくら慈悲深いルシリス様でも調子が良すぎる。それは充分知っている。
しかし、人々の祈りの力が、自分たちの行動の原動力となることは事実だ。
そして、意志の力が一見不可能な偉業を成し遂げる。
信じるという事がいちばん大事なのだ。
お父様も、そう言っていらした。
だから私は説き続ける。
みんなが信じ、光り溢れる世界を作るために。
「だけど‥‥」
私は遠く、天へと伸びる光りの柱を見上げ、呟く。
「何か、邪な波動が強くなってゆく‥‥」
それから十日を経ずして、ラーカス王国の王都ラーカシアが、帝国軍の手により占領されたことを、私は知りました。
しかし、それが、これから訪れる邪悪の影のほんの前触れに過ぎないとは知る由もなかったのです。